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2012年10月9日更新

10月9~14日に都内の東京国際フォーラムで開催される国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会を前に、警視庁は9月7日、テロ総合対策本部会議を開き、警備部や公安部の幹部ら約120名が出席した。同総会には、約180の国から財務相や中央銀行総裁が出席し、日本で開催されるのは48年ぶりである。テロ総合対策本部長を務める高橋副総監は「違法行為を伴う過激な抗議活動や関係機関へのテロ、サイバー攻撃など懸案は多い。インターネットを通じた呼び掛けで情勢が急に変化することもある」と強調した上で、「全職員が危機意識を共有し、連携して対策に当たってほしい」と訓示した。

警視庁は、羽田空港や東京湾などでテロ対策の訓練を相次いで実施し、国際テロ組織のメンバーの入国実態などを把握する方針である。また、政府機関や企業のホームページなどを狙ったサイバー攻撃への警戒を強めている。

10月7日付の産経新聞によると、今回懸念されているのは、総会での未公表情報の窃取、財務省や外務省のHPの改ざん、会議の際のプロジェクターの操作妨害であるという。また、会場内外の安全な回線の確保と携帯型端末の取り扱いも要注意である。オーストラリアのスティーブン・スミス国防相が北京を初めて訪問した際、同国防相とその側近たちは、諜報を恐れ、自分たちがいつも携帯電話、ラップトップ、その他の電子機器は持っていかなかったと報じられている。同国防相は、こうした警戒措置がどの国への訪問時にも適用されているのかどうかについて口を閉ざしている。だが、政府関係者は、同国防相の次の言葉を傾聴すべきだろう。「我々は、大臣間のコミュニケーションの秘匿性を非常に重視している。民間であれ、政府であれ、自分たちのコミュニケーションの安全性に留意すべきだ。サイバー攻撃のリスクは現実のものとしてある以上、人々は必要な予防策を講じなければならない。」

IMFがサイバー諜報活動のターゲットになるのは、今回が初めてではない。2011年6月、IMFは、数ヶ月間にわたって高度なサイバー攻撃を受けていたことを明らかにしている。マルウェアをインストールすることで、「デジタル・インサイダー」の役割を果たそうとしていたという。2011年6月14日付のブルームバーグの報道によると、文書やメールなど大量のデータが流出したとのことである。ブルームバーグは、名前は特定していないものの、外国政府が背後にいるものと見ている。IMFは、アイルランド、ギリシア、ポルトガルへの融資策や各国との交渉に関する機微な情報を握っており、データベースの情報が流出すれば、市場を揺るがしかねない。しかし、攻撃者がそうした情報にアクセスできたかどうかは不明である。世界銀行は、用心のため、IMFとのネットワーク接続を一時遮断した。

その他にも容疑がかかっていたのが、アノニマスである。アノニマスは、以前から、IMFだけでなく、世界銀行や中央銀行、連邦準備制度への抗議運動を目的とする、Operation Empire State Rebellion (OpESR)を立ち上げていた。2011年当時、アノニマスは、市民投票に委ねることなく、公共サービスの削減と引き替えに、ギリシアへの1100億ユーロの融資をIMFが決定したことを非難していた。2011年6月1日には、ツイッターに「#OperationGreece: Target: http://www.imf.org」と投稿し、IMFへの攻撃を示唆していた。

参考情報:
2012年9月7日付テレビ朝日「IMF総会を前に…警視庁が『テロ総合対策会議』」
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220907059.html
2012年9月7日付時事通信「IMF総会に万全の警備指示=警視庁がテロ対策会議」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012090700696
2012年9月8日付毎日新聞「テロ総合対策本部会議:IMF総会を前に―警視庁/東京」
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20120908ddlk13010212000c.html
2012年10月7日付産経新聞「未公表情報読み取り、サイト改竄…サイバー攻撃に厳戒 9日からIMF・世銀総会」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121007/crm12100721420014-n1.htm
BBC News, “IMF hit by ‘very major’ cyber security attack,” June 12, 2011,
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-13740591
Stephen Foley, “Anti-capitalist hackers in the frame as IMF reveals cyber attack,” The Independent, June 13, 2011,
http://www.independent.co.uk/news/world/politics/anticapitalist-hackers-in-the-frame-as-imf-reveals-cyber-attack-2296760.html
Amy Lee, “International Monetary Fund Braces For Possible Hack Attack From Anonymous,” The Huffington Post, first posted June 1, 2011, updated August 1, 2011,
http://www.huffingtonpost.com/2011/06/01/anonymous-imf_n_869914.html
Jonathan Pearlman, “Australian minister leaves phone and laptop in Hong Kong to avoid Chinese espionage,” The Telegraph, June 6, 2012,
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/9313242/Australian-minister-leaves-phone-and-laptop-in-Hong-Kong-to-avoid-Chinese-espionage.html
Michael Riley and Sandrine Rastello, “IMF State-Backed Cyber-Attack Follows Hacks of Lab, G-20,” Bloomberg, June 14, 2011,
http://www.bloomberg.com/news/2011-06-11/imf-computer-system-infiltrated-by-hackers-said-to-work-for-foreign-state.html
David E. Sanger and John Markoff, “I.M.F. Reports Cyberattack Led to ‘Very Major Breach’,” The New York Times, June 11, 2011,
http://www.nytimes.com/2011/06/12/world/12imf.html

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