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日立システムズ SHIELD Security Research Center

2012年7月3日初版公開

6月29日、政府は、情報セキュリティ緊急支援チーム「CYMAT(サイマット)」を発足させた。CYMATとは、サイバー事件機動支援チームを意味する「Cyber Incident Mobile Assistant Team」の略称である。 標的型攻撃など単独の組織では対応が難しい高度なサイバー攻撃が増えたことから、府省庁横断型組織を結成した。 記者会見で、藤村修官房長官は、アノニマスの攻撃による被害も支援対象になるとの認識を示した。

政府は、2005年4月に情報セキュリティ政策の基本戦略を決定する「情報セキュリティ政策会議」と、その遂行機関である「内閣官房情報セキュリティセンター」を設置した。CYMATは、同センターの下部組織となる。

CYMATは、各府省庁から選出された情報セキュリティ担当職員で構成される。現段階では、経済産業省や防衛省職員を含め26名であるが、数年後をめどに、最終的には40名規模にする計画となっている。 CYMATの統括責任者は、政府最高情報セキュリティ責任者(CISO)でもある内閣官房情報セキュリティセンター長が担う。内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)職員も、CYMATメンバーとして参画する。

CYMATの役割は、情報セキュリティに関わる事件が発生した際、被害拡大の防止や復旧、原因調査、再発防止に向けた技術的な支援と助言を行うことである。 平常時は、座学や演習、内外の講演、人材育成コースへの参加などで情報セキュリティに関するメンバーの能力育成に努める。 支援対象となるのは、政府機関、情報セキュリティ対策推進会議オブザーバー参加機関、独立行政法人などである。

有事の際には、各省庁の情報システムを24時間監視し、個別事案について情報収集・分析をしているNISCの「政府機関情報セキュリティ横断監視・即応チーム」(GSOC)や、 各府省庁のコンピュータ・セキュリティ問題対応チーム(CSIRT : Computer Security Incident Response Team)と連携して、鎮圧・被害拡大防止に当たる。

CYMATの職員の任期は、明らかにされていない。日本の場合、公務員の人事異動のサイクルは2~3年であり、情報セキュリティの専門家を確保することが難しい。 2012年4月26日の情報セキュリティ政策会議でも指摘されているように、情報セキュリティに通暁し、なおかつ「国益を考えて、警察庁、総務省、経済産業省、防衛省(などの省庁を)をまとめられる人材」が必要である。 そのような人材でない限り、省庁の枠を超えて、迅速にサイバー脅威に対応し、対策を実行に移すことはできないであろう。

参考情報:
2012年4月26日付内閣官房情報セキュリティセンター「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 情報セキュリティ政策会議 第29回会合 議事要旨」
http://www.nisc.go.jp/conference/seisaku/dai29/pdf/29gijiyoushi.pdf
2012年6月29日付内閣官房情報セキュリティセンター「報道資料:情報セキュリティ緊急支援チーム(CYMAT)設置について」
http://www.nisc.go.jp/press/pdf/cymat_press.pdf
2012年6月29日付日経BP(白井良著)「省庁横断のサイバー攻撃対策機動チーム『CYMAT』が発足」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120629/406366/?ST=security
2012年6月29日付日本経済新聞「サイバー攻撃に政府対応チーム 障害からの復旧支援」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2902G_Z20C12A6PP8000/
2012年6月30日付毎日新聞「サイバー攻撃:政府が対策の新組織」
http://mainichi.jp/select/news/20120630k0000m010108000c.html

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