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日立システムズ SHIELD Security Research Center

2012年6月27日初版公開
2012年7月3日更新

概要:

2012年6月23日付のアノニマス名によるpastebin (http://pastebin.com/a4FYRtkr) 投稿で、日本政府に対する大規模な攻撃「#opJapan」開始が予告されていたが、 6月26日から日本政府のホームページへの攻撃が開始され、27~28日と30日には日本音楽著作権協会(JASRAC)のホームページが一時つながらなくなった。 警視庁は、6月28日から本格的な調査に乗り出している。6月29日にアノニマスは毎日新聞の取材に応じ、今後も攻撃を続けることを示唆した。 また、7月2日に引き続き3日にも、7月7日午前10時の渋谷宮下公園でのOperation Anonymous Cleaning Service(OpACS:街頭清掃作戦)と題したオフ会行進のプレスリリースが発出され、 OpJapanと異なる平和的な方法での抗議活動であることを強調した。

詳細:

6月26日午前11時50分ごろ、内閣官房の情報セキュリティセンターから連絡を受け、財務省理財局管理課は、外部から何者かが「国有財産情報公開システム」に侵入したことを確認した。 一部が書き換えられ、海外で行われたデモの画像に、大飯原発の再稼働反対を訴える文字を合成したものが掲載されていた。 更には、「我々はアノニマスだ。我々は許さない」などとする声明が書き込まれていた。午後2時ごろ運営を停止し、サーバー上に置かれていた不正ファイルを削除したという。 財務省の担当者は、不正ファイルが置かれた原因を現在究明中としており、「著作権法改正に関するアノニマスの宣言は承知しているものの、 今回のサイバー攻撃がアノニマスと関連しているかどうかは、現時点では不明である」と話している。

6月26日夜にはツイッターで、裁判所、国土交通省所管の河川事務所が攻撃対象として挙げられた。最高裁によると、26日午後8時50分ごろ、全国の裁判所のホームページに通じるサイトが、 アクセスしても表示できない状態になっていることが確認された。同サイトは、約50分後に復旧した。外部から攻撃によるものかは不明としている。 また、26日夜には、知財高裁のホームページも、一時閲覧不能となった。

国土交通省によれば、関東地方整備局霞ヶ浦河川事務所のホームページでも一部が改ざんされる被害があった。 職員が雨量などのデータを確認するためのページに「我々はアノニマスだ」などの英文と原発再稼働に反対するデモの様子の写真が貼り付けられていた。 2ちゃんねるによると、霞が関と霞ヶ浦を間違えてサイバー攻撃をしたとのことである。実際、6月27日午後8時51分にop_japanから日本語のツイッターで、「昨日は忙しいだった。 でもちょっとミスしました。誤爆ごめんな(笑) やっぱり日本語は難しい。でもみんなは優しい。ミスの説明を言いました。ありがとう。頑張ります」との表明があった。

こうした日本への知識の乏しさは、自民党へのサイバー攻撃でも見受けられる。自民党が与党と勘違いされて、民主党よりも先に攻撃された可能性もある。 6月26日夜から27日朝にかけては、アノニマスがサイバー攻撃を呼び掛けていた自民党と民主党のホームページが一時つながりにくくなった。 ツイッターでは、「日本政府がダウンロードを犯罪にしたから行動している」と表明、民主党のホームページアドレスを示して、「次はお前だ」と書き込んでいた。 6月27日午後8時51分にop_japanは、日本語のツイッターで、「ただ、自民党と民主党はミスではなかった。彼らは違法ダウンロードを支持して投票したから、お仕置きされた」と説明している。

民主党のホームページがダウンには至らなかったためか、アノニマスは、2ちゃんねるを通じて、DDoS攻撃ツールであるHOIC (High Orbit Ion Canon/高軌道イオン砲) の使い方を教え始めた。 6月27日23:27:45には、アノニマスを名乗る者から、「私たちは…民主党のホームページを落とすために努力しています。…私たちと協力してそれを与えることができませんか。 …やり方は以下の通りダウンロードしてURLにhttp://www.dpj.or.jp/をつけて下さい」という投稿が2ちゃんねるにあった。

6月25日にAnonPR (http://anonpr.net/opjapan-expect-us-512/#more-512) とpastebin (http://pastebin.com/T3zEieUC) へ投稿されたアノニマスの宣言「#opJapan --- Expect US(#opJapan―我々に期待せよ)」では、 本著作権法改正が問題視され、日本政府と一般社団法人日本レコード協会が標的とされた。日本レコード協会によると、26日午後10時までに被害は出ていない。

しかし、日本音楽著作権協会(JASRAC)のホームページが6月27日夜に引き続き、30日午後もアクセスしても閲覧しにくい状態になり、同協会が原因調査を始めた。 同協会は、「サーバーのダウンには至っていない。再度原因を詳しく調べる」としている。今回の不具合との関連は不明であるが、6月30日のOpJapan Officialのツイッターには、 「TANGO DOWN: jasrac.or.jp」という投稿があった。アノニマスは、6月25日の宣言の中で、同協会が中心となって導入を進める違法アップロードを監視するISPモジュールが、 「日本のインターネットユーザーを監視する」ものであり、「法を順守する市民が自由社会で享受すべきプライバシーが甚だしく侵害される未曾有のアプローチ」だと非難していた。

藤村修官房長官は、6月27日午前の記者会見で、アノニマスによる攻撃予告声明とサイバー攻撃について言及した。官房長官は、「声明と、いま出ている不具合との関係が必ずしも明確ではない」と指摘した。 その上で、「今のところ、コンピューターウィルスの感染や情報の流出は確認されていないが、『アノニマス』からの声明を受けて、きのう、各府省に対し、警戒態勢の強化と迅速な対応を指示した」と説明した。 更に、「サイバー攻撃への対処は国家の危機管理上も重要な課題であり、政府としては、今回の事案も参考にしながら、政府機関全体の情報セキュリティー対策の充実・強化を図りたい」と述べた。

また、デモや座り込みを呼び掛けるツイッターも出ている。6月26日の18:37にOpJapan Official (@op_japan)が、「違法ダウンロード刑事罰を止めさせる方法は一つだけあります! 現実の世界で、日本の人々は抗議するべきです。  サイト攻撃ではなくデモで! チラシで! 座り込みでも! 何もしないなら、何もが変わらない! 今すぐインターネットを保護しないと、すべてを失う!」とツイッターに投稿している。

7月3日、アノニマスは、「街頭清掃作戦(Operation Anonymous Cleaning Service/OpA.C.S.)の発動を宣言」と題した日本語のプレスリリースを発表した(http://anonymous-jp.com/120701_opACS.html)。 7月2日のプレスリリース(http://anonnews.org/press/item/1622/)よりも詳しく、集合場所(渋谷区宮下公園)と活動エリア(渋谷駅周辺、その他都内各所)が明記されている。 また、OpJapanとの相違点として、合法性が強調されている。「情報の自由とプライバシーというかけがえのない権利を守るためとはいえ、違法となりうる行為によって抗議を行うことは、 広く賛同を得るための行動として相応しいものとはいえません。そこで私たちOpACSに参加するアノニマスは、OpJapanに参加するアノニマスと違い、平和的な方法で抗議を行うことを約束としました。」

また、同日の早朝から、OpJapan Officialのツイッターには、反原発と反東京電力の投稿が見られるようになった。 AnonymousIRC名で、「原発を再稼働させる政府と電力会社に不満を持っていますか? 我々はあなたたちを支援します!」などの書き込みがある。 2011年5月にアノニマスは「Operation Green Rights (緑の権利のための作戦)」と題して、地球の環境汚染を進めている企業へのサイバー攻撃を宣言した。 攻撃先候補として、バイエル、BP、ダウ・ケミカルと並んで、福島の事故を引き起こした東京電力も挙げていた。しかし、当時は東京電力へのサイバー攻撃は行われていない。

また、毎日新聞がアノニマスのホームページにメールで質問状を送付したところ、6月29日に英文で返信メールがあったという。 「攻撃はいつまで続くのか」との問いには、「いくつかは既に攻撃したが、まだのものもある」、「状況が変わるか、攻撃に飽きるまで続く。残念ながら先に飽きてしまいそうだけど」と答えた。 日本を標的とした理由については、「違法なダウンロードをした人を刑務所に入れることはばかげている」と説明した。攻撃対象については、「分裂して他の標的を攻撃することもあるかもしれない。 我々にはよくあることだ」と指摘した。また、「確実なことは言えないが、日本人の影は強く感じられる」と日本人の関与を示唆した。

更新箇所:

6月30日の2回目のJASRACへのサイバー攻撃
OpJapanとOpACSの相違点
6月29日の毎日新聞のアノニマスへのインタビュー

参考情報:

2011年6月29日付週刊ダイヤモンド「アノニマスがサイバー攻撃の対象企業を”選挙”『地球の緑の敵』1位バイエル、2位東電」
http://diamond.jp/articles/-/12921
2012年6月27日付朝日新聞デジタル 「財務省のサイト改ざん アノニマスが攻撃予告」
http://www.asahi.com/national/update/0626/TKY201206260569.html
2012年6月27日付産経新聞「JASRACのHPも不具合 国際的ハッカー集団攻撃示唆」、
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120627/crm12062723350021-n1.htm
2012年6月27日付産経新聞「国際的ハッカー集団、日本にサイバー攻撃?財務省・最高裁HPなどで障害」、
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120627/crm12062707080001-n1.htm
2012年6月27日付日本経済新聞「財務省HPに不正アクセス『アノニマス』か最高裁でも一時障害」、
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2604O_W2A620C1CR8000/?dg=1
2012年6月27日付読売新聞「ハッカー集団アノニマス、日本政府HP攻撃開始」、
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120626-OYT1T01706.htm
2012年6月27日付読売新聞「省庁HP停止続く、ハッカー集団アノニマス攻撃」、
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120627-OYT1T00693.htm
2012年6月27日付NHK News「サイバー攻撃被害相次ぐ『アノニマス』か」、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120627/t10013134041000.html
2012年6月27日付NHK News「サイバー攻撃 警戒強化を指示」、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120627/k10013149391000.html
AFP-Jiji, Jiji, Kyodo, “Anonymous claims retaliation for copyright laws: Website Attacks prompt probe,” June 28, 2012,
http://www.japantimes.co.jp/text/nn20120628a2.html
2012年6月29日付産経新聞「乏しい知識、主張見えず アノニマス『ちょっとミス、日本語難しい』」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/572454/
2012年6月29日付毎日新聞「アノニマス:違法ダウンロードの刑罰化で日本攻撃」
http://mainichi.jp/select/news/20120629k0000e040188000c.html
2012年6月30日付共同通信「JASRACサイトまた不調『アノニマス』か」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG30030_Q2A630C1CC1000/

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