2012年6月26日初版公開
2011年11月10日、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)と日本セキュリティ監査協会(JASA)は、韓国の知識情報セキュリティ産業協会(KISIA)と共同声明を発表した。 日韓両国でサイバー攻撃が急増していることを踏まえ、両国の政府・公共機関や民間企業、一般ユーザーに一層のセキュリティ対策を呼び掛けた。
共同声明の背景には、日韓共にサイバー攻撃が増加・高度化しており、とりわけDDoS攻撃と標的型攻撃が目立つようになっていることが挙げられる。KISIAの李得春(イ・ドクチュン)会長によると、 韓国では情報セキュリティ事件に関する情報公開に抵抗を持つ企業は少なくなかったが、2011年9月に施行された「個人情報保護法」を機に、企業の姿勢が変わりつつあるという。(脚注:ⅰ)
共同声明は、以下の5項目から構成されている。(脚注:ⅱ)
1) 情報セキュリティ対策の強化
2) 高度化するサイバー攻撃に対し、日韓の情報連携・共有の強化及び国際的な官民協力体制の構築
3) 心理的弱点を狙うサイバー攻撃に備えた人的・組織的な情報セキュリティ対策の実施
4) 情報セキュリティマネジメントシステムの確立、情報セキュリティ監査の強化
5) 政府公共機関と情報セキュリティ産業団体の一層の協力及びサイバー攻撃対策に関する知識の普及・啓発
情報処理推進機構(IPA)と韓国情報保護振興院(KISA)では、既に協力関係が結ばれており、定期的にセキュリティに関する情報交換を行うなどの政府レベルでの協力が進んでいる。 JNSA、JASA、KISIAは、民間レベルでも情報共有を進めることで、迅速な対応を図りたいとしている。特に、標的型攻撃の場合、情報の告知・共有により、高度化するサイバー攻撃への迅速な対応体制を整えたいという。(脚注:ⅲ)
一方、自衛隊と韓国軍の間でのサイバーセキュリティ協力は現在確立していない。日韓では、歴史的背景のため、日本との軍事協議には国会内などで反対が根強く、軍事協力が進んでいない。(脚注:ⅳ) しかし、2012年5月、日韓両政府は、自衛隊と韓国軍が防衛に関する秘密情報を交換する規則を定める「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」と食糧や輸送作業を融通する「物品役務相互提供協定(ACSA)」を締結する方向で最終調整に入っていた。 GSOMIAは、ミサイル・核兵器など北朝鮮情報交換を主目的としている。2012年4月の北朝鮮の弾道ミサイル発射時の日韓の連携不足が指摘され、締結に向けた調整が加速していたためである。(脚注:ⅴ) 今後、もし自衛隊と韓国軍でもサイバーセキュリティ協力を進めていくのであれば、機微なインテリジェンス協力上、不可欠になると思われる。
2012年6月14日にワシントンで開かれた米韓外務・国防担当閣僚級会合(2+2)の席で、米国が韓国に対し、GSOMIAを早期に締結するよう求めた、と韓国紙・東亜日報が6月18日に報じた。 これには、中国をにらみ、アジア太平洋地域を重視する新国防戦略を策定した米国が、日韓の軍事協力の実現・拡大を早期に図りたい思惑があるものと見られる。 だが、同紙によると、韓国の金星煥外交通商相は、同協定は韓国人の国民感情の上で「問題がある」と述べ、早期締結に難色を示したという。(脚注:ⅵ) そのため、GSOMIAの実際の締結までには、まだまだ時間がかかるものと思われる。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。