衆議院総選挙後のサイバーセキュリティ政策の今後について

2012年12月17日初版公開

12月16日の解散総選挙で、自民党が圧勝した。サイバーセキュリティについて全く言及のなかった民主党の政権公約と対照的に、自民党のJ-ファイル総合政策集には、サイバーセキュリティについて以下の章が設けられており、自民党のサイバーセキュリティへの関心が伺える。(脚注:ⅰ)



44 サイバーセキュリティの対策強化
 頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
 特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関のすべての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。
 これらの施策とともに、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築することを呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10 万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。


126 サイバーセキュリティの対策強化
 わが国の情報セキュリティ技術は未だ世界最高峰にはほど遠く、現行目標(2020 年)では足下の有事に対処できません。国家安全保障、外交、国民の安心・安全等の観点から、外国からのサイバー攻撃※を有事と定義し、情報セキュリティの抜本的強化を図ります。具体的には、今後5 年程度に目標を短縮し、官民の設備投資、情報システム担当者等の集中的な訓練や人材育成、啓発活動、研究開発等の総合的な対策を推進するための基金の創設や予算措置を行うと同時に、有事関連法令や秘密保護関連法令の法的整備や情報セキュリティ関連組織の増強を行います。
 特に、警察庁や防衛省、海上保安庁においては、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関のすべての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。


自民党は、以前からサイバーセキュリティについて関心を持ち、調査を行ってきた。2012年2月24日付で「情報セキュリティに関する提言」 (脚注:ⅱ) と題した32ページにわたる文書を出している。この中で、自民党は、サイバー攻撃が場合によってはサイバー空間における有事になりえることから、国家安全保障上の重要課題に位置づけるべきと論じている。有事に対処できるだけの国産技術研究開発、高度情報セキュリティ産業の創出、重要インフラ防御、人材育成及び法整備が求められている。この提言書が、政権公約の下敷きになっていると考えられる。

今後の政権運営においては、景気回復とデフレ脱却が最優先課題になること (脚注:ⅲ)、また衆参ねじれ国会の継続から、自民党主導のサイバーセキュリティ強化及び関連予算の増額 (脚注:ⅳ) は、すぐには実現が難しいであろう。しかし、自民党は憲法の改正及び領土問題に対する態勢強化を打ち出していることから、本件がらみのサイバー攻撃が予想されることを忘れてはならない。サイバー空間上の有事に関する定義の早急な確立、攻撃兆候・攻撃手法の監視の強化、対応能力の向上など、課題は山積している。


参考情報:

  1. 自民党ホームページ「J-ファイル2012 総合政策集」
    http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf
  2. 2012年2月24日付自民党ホームページ「情報セキュリティに関する提言」
    http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-096.pdf
  3. 2012年12月17日付朝日新聞「安倍総裁、消費増税は『来年4~6月のGDP見て判断』」
    http://www.asahi.com/politics/update/1217/TKY201212160171.html
  4. 「情報セキュリティに関する提言」では、政府の情報セキュリティ関連予算が293億円であるのに対し、自民党案では、政府案の強化のために545億円、新規の事業に1100億円を求めている。


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